片山剣友会が剣道時代に紹介された記事をご紹介致します。
(剣道時代 2004年3月号 より)
会長 辻俊太郎
片山剣友会は結成して約30年になります。私自身、子供のころ通っていた道場では父母たちは子供を道場に預けっぱなしで、たまの試合のとき、自分の子供も試合を見て帰るということが多かった時代でした。
しかし、道場の行き帰り見知らぬ大人から「ぼうず、剣道やっているのか?頑張れよ」とよく言われました。道場では年1,2回、おしるこをつくってふるまってくれました。それが楽しみで道場に通ったものです。昭和26、27年頃で、物がない時代でした。防具などは官物か、父親のお古を使用して、壊れたら自分たちで直して使っていました。新品の防具を使用している子供は一人もいませんでした。
このような時代に育った私は剣友会という組織を運営するにあたり、子供たちを指導者と父母とで分け隔てなく育てることを決めました。1つの会に責任者が2人いてはいけないという論理から後援会はつくりませんでした。当時、遠征試合にいくにあたって指導者の車、父母の車、お弁当の手配(母の手作り)など、いろいろやりました。そのうち会を巣立った子供たちが会に戻り、私たちを助けるようになりました。ご両親たちの理解と協力が私にとって一番の力です。
兄貴分のOBがいっぱい
いつでも戻れる環境を準備
わが会は小学生を中心とした団体で少年少女剣士の育成に取り組み、稽古・試合・他行事に挑んでいます。その中で大切なことは、それぞれの協力と信頼です。「指導員」「父母」「OB」による三位一体であります。しかしそれだけではその時その時代に区分され、点で終わり、会としての線につながらない部分がたくさん出てきます。そこで、わが会では、会を線としてつなげるために、「子供からOBを経た若手指導員」「卒業生とその父母」を加えた「五位一体」の体制をとっています。
指導員の中での約半数の若い世代は幼きころは会に所属し、稽古に励み、当会を卒業しました。おのおのの中学、高校、大学などで剣道を続けた者、また剣道から一時離れたものの時を経て会に一剣士として戻ってきた者が今、子供たちと一緒に剣を交えております。
自然界でいうと、「鮭が川で生まれ育ち大海で旅をしてまた故郷の川に戻ってくる」といった感じではないでしょうか。いつでも誰でも戻って来られる環境が、わが会の長所といえる点です。その者たちが今度は指導者として、また、子供たちの兄貴分として接しています。わが会は剣友会であり、指導員すべてが奉仕で指導し、子供と接しております。
卒業生の存在もたいへん力になることろです。OB会も存在しております。初代の主将・若手指導員などを中心に先輩・後輩の縦のつながり、同期・同世代の横のつながりを大切に、会行事などの参加・協力、また子供たちとの交流も非常に良い関係を保っております。OB会の父母の方々も今なお、会の見守りや後押しの力を与えてくれております。
そしてなにより青少年育成に対して大きな支えになっているのが父母・役員の方々です。稽古は小学校の体育館が道場になりますので、役員の方々に先頭に立ってもらい、学校関係、他スポーツ団体との話をスムーズに行なっていただいています。子供たちの成長にそって指導者と父母の間で対話がいつでもできるように心掛けています。父母同士の交流や子供たちとの接し方も大切にしております。
片山剣友会を表す「五位一体」。
一・指導員、二・子供からOBを経た若手指導員、三・卒業生とその父母、四・現在の父母、五・子供。この「五位」を「一体」することにより会の運営と子供の育成がより力強くなっていくように感じます。この「五位」が点では無く線で結ばれ、結び続けることによって人と人の協力と信頼という「輪」ができます。
~中略~
当会主催の「招待試合」ですが、剣友会発足当時、周辺地域の剣道団体から誘われて細々と試合をやっておりました。招待ばかりされていた当時、こちらでも試合を主催をしようという気運が高まり、10数チームを招き親善試合を行ないました。
その後、各指導者の紹介で参加チームが増えてまいりました。そうこうしているうちに口コミで招待試合のことが広まり参加団体が50数チーム以上になり、お陰様で、23回を迎えることが出来ました。審判の先生については僭越ながら当会にて選出し、招請状を送り審判の任にあたっていただいております。試合方法につきましては当日抽選をし、3チームリーグ戦の後、トーナメントにて勝敗を決する方法をとっております。
参戦していただいている各会、諸先生方のお陰と言い尽くせるところですが、大会運営に関しては前述の「五位一体」なしでは成し遂げられません。準備では「子供たちに最高の舞台」を用意するため、父母の方々の大変な力を感じます。指導者は子供たちに「最高の試合と思い」をさせるため、OBたちは自分の思い出に返り子供たちに「最高の後押しと大会成功」をさせるために。それが一体し「最高の子供たちへの応援」とするのです。当会は一度も優勝したことがありませんが、会の誇りある大会です。
会長を続けて20年以上になりますが、師や弟子や先輩・後輩、そして友人関係を大切にすることはもちろん、一人ひとり「点ではなく線」になる、そして「輪」になることのできる団体をこれからも目指していきたいと思っております。
ほんとうの挑戦・・・目標は「今の時代と未来」です。世間では「今の子供は」「今の若者は」などと昔からあることですが言われます。
ではほんとうに今は駄目なのか?決してそうではないはずです。今一瞬を大切に感じ、未来の光を呼び覚まし、大きな道を進んでいける子供たちと団体を、剣道を通じて挑戦していきたいと思っております。